妊婦のこと

【産後の体調不良】産褥期〜産後のこころと身体について知ろう

妊娠期に約10ヶ月かけて変化した身体は、出産したからといってすぐに元には戻りません。
“出産後の母親は交通事故後全治一ヶ月”という比喩があるように、妊娠・出産というダイナミックな変化は想像以上に、身体的・精神的な負担を与えます。

ここでは産後1ヶ月のママのこころと身体の状態についてお伝えします。

産後、こころと身体がどのように変化するのかを知っておくことで、避けられるリスクがあります。これらは妊婦さん・褥婦さん本人だけではなく、パートナーも十分理解する必要がありますので、ぜひ夫婦で共有してくださいね。

産褥期について

分娩を期に、ママの身体は妊娠期から産褥期へと変化します。
産褥期とは、分娩後から妊娠前の状態(非妊娠時)へと戻る期間のことで、一般的には分娩後約6〜8週のことを指します。

産褥期の心身の変化

子宮の変化

出産時、子宮は非妊娠時の約5倍の大きさになっています。
産後は後陣痛と呼ばれる子宮が元の大きさに戻るための収縮によって、徐々に非妊娠時の状態に戻っていきます(子宮復古)。
一般的に後陣痛は、初産婦に比べて経産婦、単胎妊娠に比べて多胎妊娠の方が強いとされています。

また産後は子宮内より、悪露(おろ)と呼ばれる血液・分泌物の排出がみられます
これは、出産後に胎盤や卵膜の剥がれた部分から生じているものです。
産後、子宮は後陣痛により元の状態に戻っていくことで子宮内の止血が行われる仕組みです。そのため悪露は、産後約4〜6週間続きます。
赤色、褐色、黄色、白色、と徐々に悪露の性状は変化し、やがて消失します。
産後2週間経過しても赤い出血が続く場合や、血の塊が排出される場合などは子宮内に遺残がある可能性もあるので、一度産院に相談するようにしてください。

血液の変化

妊娠中は胎児への血流確保のため、母体の循環血液量は最大1.5倍程度にまで増加します。
これは出血を伴う出産に備えるためでもあります。出産時の出血により、産後は血液の中でも特に赤血球が減少します。
場合によっては貧血の薬が処方される褥婦さんもいるかもしれないので、医師の指示に従って内服しましょう。

産後約1ヶ月までに非妊娠時の状態に回復すると言われていますが、産後しっかり休息や食事を取らないと、なかなか体調が戻らないと感じられる方もいます。周囲のサポートを得ながら過ごすようにしてください。
また母乳の素も血液ですので、食事はバランスよく、水分も意識して摂ると良いですよ!

骨盤底筋群のダメージ

骨盤底筋群とは、骨盤の底の部分にある筋肉のこと。
恥骨・尾骨・坐骨などの骨や、骨盤内にある膀胱・子宮・膣・直腸などをハンモック状に下から支えている筋肉のことです。
骨盤底筋群は子宮を支えている筋肉のため、妊娠週数が進み子宮が徐々に大きくなると、下方に伸ばされていってしまいます。
つまり、妊娠中は常に負荷がかかっている状態です。
そして、最も骨盤底筋群がダメージを受けやすいのが出産です。
いきみなどによる強い負荷は骨盤底筋群にダメージを与えます。
妊娠・出産による骨盤底筋群へのダメージが大きく、緩んだり傷ついたりしてしまうと、産後に尿漏れや頻尿、子宮脱などの症状が生じてしまうのです。

骨盤底筋群のダメージを最小限にする方法としては、妊娠中は姿勢を整え、医師から運動制限のない方は骨盤底筋群を意識した呼吸や簡単なトレーニングなどをすると良いです。
また産後は、元の身体に戻すことを焦って、腹筋などをしてはいけません。
まずは横になり、深い深呼吸やお尻を挙上する運動などから少しずつ筋肉を整えていくことが大切です。
産後の骨盤底筋群の緩みやダメージは徐々に良くなっていくことが多いですが、尿漏れなどの症状がなかなか改善しない場合などは、医療機関を受診して医師の診察を受けてくださいね!

傷の痛み

経膣分娩の際の会陰裂傷・会陰切開の傷や、帝王切開による腹部の傷の痛みは、産後の日常生活や育児に大きな影響を与えます。
会陰の傷は、場所や大きさによっては椅子に座ることが難しかったり、排尿・排便に影響がある場合もあります。
帝王切開後は、腹圧がかかると痛みが増したり、痛みへの恐怖からなかなか身体を動かせない方もいます。
そんな中で、抱っこや授乳、おむつ交換や沐浴などの育児をしていかなければいけません。
会陰や痔の痛みに対しては、円座やバスタオルなどを使用して創部に圧がかかるのを防いだり、あぐらではなく正座にするなど座り方を工夫すると、痛みが緩和されることがあります。

帝王切開の傷に関しては、腹帯を使用してお腹周りを支えたり、腹圧がかからないような動作の工夫(手で体を支えるように身体を起こす、赤ちゃんを抱き上げるときは膝を使う、など)をしてみましょう。
授乳中、薬を飲むことを躊躇う方もいるかもしれませんが、授乳中でも安全に使用できる痛み止めはあります。
痛みが辛い時は、無理せず痛み止めなどの使用を医師や助産師に相談してみてくださいね。
また、ズキズキ・ドクドクと脈打つような強い痛みを感じたり、傷が赤み・膿などの炎症を起こしている場合は異常のサインです。傷のチェックをしてもらう必要がありますので、医師の診察を受けてくださいね。

こころの変化

産後は疲労や睡眠不足、ホルモンの変化により、身体だけではなくこころの状態も不安定になります。
【マタニティブルーズ】とは、産後3〜10日に発症する一過性の軽い抑うつ状態のことです。
具体的には、不安感・集中力の低下・涙もろくなる・情緒不安定・睡眠障害などです。
約30%の褥婦さんが経験すると言われており、一般的に症状は軽度で、通常2週間以内に消失します。

マタニティブルーズは生理的な変化の一つと考えられているため、特に治療を必要とするものではありませんが、これらの症状が長期間持続する場合は、産後うつの可能性もあります。

産後うつは、マタニティブルーズのような気分の落ち込みなどの症状が、2週間以上続く場合に疑われます。
多くは産後1ヶ月以内に発症し、褥婦さんの約5~10%にみられると言われています。
症状は、躁うつ・抑うつ症状、身体症状、不眠、食欲不振や過食、無気力、子どもへの無関心、希死念慮などです。

産後うつの状態になると、症状が自然に軽快することは難しく、重症化すると自殺や虐待など、母子の生命を脅かす事態になりかねません。無理せず産院や心療内科などの専門機関に相談しましょう。医療機関の受診を躊躇われる方は、まずは市区町村の相談窓口や電話相談を利用して、一人で辛い気持ちを抱え込まないようにしましょう。

妊娠前からこころの不調を抱えていた方は、産後うつのリスクも高くなります。
あらかじめ産後のサポートを手厚く手配したり、相談できる場所を持っておくことも大切です。

産後のこころの不調は、本人だけでなく周囲の人がなるべく早く異常のサインに気がつき、対応することも重要です。
「産後うつは誰でもなりうる」ということを忘れないでくださいね!

父親の産後うつ

父親の産後うつが話題になっていることはご存知でしょうか。

日本における父親の産後うつは11%前後であるとの報告もあり、これは母親の産後うつと同水準です。

産後は母親はもちろんですが、父親にとってもメンタル不調のリスクが高い状態です。
父親としての責任感や周囲の期待、仕事と家事・育児の両立、経済的不安、真面目な性格や精神疾患の既往などもリスク要因となります。

近年、父親の育休取得の促進や男性の産休制度なども施行され、父親も家事・育児をするのが当たり前、という社会的価値観も定着しつつあります。

一方で、経済的不安や周囲の理解など、育児期における男性の家庭と仕事との両立には課題が多く、その狭間で悩みを抱えやすい状態ともいえます。
夫婦同時期にメンタルの不調を抱えた場合は、子どもへの影響も懸念されます。
まずは、妊娠中・産後は夫婦ともにメンタルヘルスの不調のリスクが高いということを、共通認識することが大切です。
そして、お互い不調を感じた時はどのようなサインが出るか、どんなSOSを出すのかを確認しておきましょう。
万が一に備えて、夫婦以外の頼れる存在を確保しておくことも重要です。

知っているだけで防ぐことのできるリスクがあります。
ぜひ妊娠中から夫婦でよく話し合い、お互いを大切にできる環境を整えましょう。

父親が仕事と家庭を両立できる社会を実現することは、母親が仕事と家庭を両立しやすい環境にもつながり、子どもにとっても良い環境をつくることにつながります。
男女関係なく家庭と仕事を両立できる、子育てに優しい社会が実現されることを願っています。


産後は身体のダメージ・変化に加えて、育児の開始に伴う疲労や不安、精神的ストレスで、心身は非常に危機的な状況になります。
産後をどのように過ごすか、どのように周囲がサポートするかは、その後の育児や母親の心身の健康、夫婦関係に影響を与える重要なポイントです。
生まれたら考えよう、では遅いです。
なんとかなるだろう、では取り返しのつかないことにもなりかねません。

ぜひ、妊娠中から夫婦で産後のこころと身体の状態について知り、過ごし方を具体的に考えてみてくださいね。

 

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