妊婦のこと

【マタニティ生活】妊娠つわりの対策について

妊娠した喜びもつかの間、妊娠初期に多くの人が感じる身体の変化が「つわり」です。

つわりは約50%〜80%の妊婦さんに起こるとされています。

一般的に、妊娠5週目頃から始まることが多く、最も症状が強いのが8〜10週頃、胎盤が完成する16週頃には症状が落ち着くと言われています。

つわりの症状は個人差が大きく、体調不良かな?という程度で乗り切れてしまう人もいれば、嘔気・嘔吐の症状が強く「妊娠悪阻」となり入院加療が必要になる人もいます。

また「後期づわり」という言葉もあるように、妊娠中期や後期になっても症状がある人もいます。

個人差が大きいが故に、誰かと比べられて辛い気持ちになったり、周囲の「妊娠は病気ではない」という認識から、頼りづらい環境になってしまいう人も多いです。

少しでもつわりに苦しむ妊婦さんの力になれるよう、ここでは一般的なつわりの症状と対処方法についてお伝えします。

つわりの症状

一言でつわりといっても、その症状はさまざまです。

個人差もありますが、一般的にはこのような例が多くあげられます。

  • 吐き気、胃のむかつき、食欲不振
  • 嘔吐
  • 唾液量の増加
  • 空腹時の嘔気(食べづわり)
  • 嗜好の変化
  • 匂いに敏感になる
  • 眠気
  • 倦怠感、イライラ、集中力の低下
  • 頭痛

時間帯や日によって症状やその程度が異なったり、一度症状が落ち着いたと思っても再び症状が現れることもあります。

妊婦さん自身も、自分ではコントロールできない体調不良に戸惑うでしょう。

つわりを乗り越えるには、周囲の人、特にパートナーが寄り添い支えることが大切です。日々体調の変化を共有しながら、できる限りのサポートを受けてください。

つわりの原因

つわりの原因は、実はいまだに解明されていません。

しかし、妊娠によって起こるホルモンの変化や代謝の変化、自律神経の乱れなど、いくつかの要因が影響してつわりの症状を引き起こしていると考えられています。

原因と考えられている要因をは以下の通りです。

  • 妊娠初期に分泌の多いhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)が脳の嘔吐中枢を刺激するため
  • 妊娠によって分泌が増加する黄体ホルモン(プロゲステロン)の影響で、消化器の機能が低下するため
  • 妊娠中、体内の栄養素やビタミンが不足することで代謝や血糖値に影響を与えるため
  • 精神的ストレスや自律神経の乱れによるつわり症状の悪化

つわりの対処

つわりの症状に個人差があるように、対処方法もそれぞれその人に合ったものがあるでしょう。

ここでは、一般的なつわりの対処や対応についてお伝えします。自分に合った対処をなるべく早く見つけられると良いですね。

食べられる時に食べられるものを

「妊娠したら、赤ちゃんの分までしっかり食べなくちゃ」「こんな食事では赤ちゃんに悪い影響があるのでは…」と不安に思う方は多いのではないでしょうか。

妊娠初期はしっかり食事がとれなくても赤ちゃんに影響はありませんので、安心してください

つわりはその日ごとに食べたいものが違ったり、時間帯によって症状があったりなかったりするものです。

食べられるものを、食べたい時に、食べられる分だけ食べるようにしてください。

食べられない・食べたくない時は、無理しなくて良いのです。ただし、脱水症状には注意し、水分は意識して摂れると良いですね。

消化器に優しい食事を

香辛料の多い刺激物や、揚げ物などの脂質、生モノなどは胃腸に負担をかけます。

消化しやすい食べ物を選ぶようにしましょう。

また食事は一度にたくさん食べるよりも、分割したほうが良い場合があります。1日3食ではなく、5−6回に分けるなど間食を上手に取り入れましょう。よく噛んで、ゆっくり食べることを心がけましょう。

食べづわり(空腹時に気持ちが悪くなる)の場合は、飴やガム、グミ、ゼリー、ドライフルーツなどの軽食を少量ずつ摂取するのもおすすめです。

ビタミンB6の摂取

ビタミンB6には吐き気を抑える効果があると言われており、実際にアメリカではビタミンB6を妊娠中に適切に摂取することが推奨されています。

バナナ、鶏肉、魚、ごま、デンプン質の野菜などに多く含まれているため、つわり中に食べられそうなものがあれば、ビタミンB6摂取推奨量(1日1.9mg)を超えない範囲で意識して摂取してみると良いですね。

生姜の効果

生姜に含まれる辛み・香りの成分が消化管の働きを調整し、つわりの症状を軽減する効果があると考えられています。

妊婦さんの摂取量は1日2000mgまでがよいという報告もあるので、1日1000mg程度(おろし生姜ティースプーン1杯、生姜エキス2ml程度)の生姜を摂取してみるのも良いでしょう。

生姜スープやジンジャーエール、生姜ティーなどで楽しむのもおすすめです。

香りを避ける・取り入れる

つわり中は匂いに敏感な人が多いため、気持ち悪くなる香りは避けるのが無難です。

料理は家族にお願いしたり、出来合いの食品を利用するなど工夫して無理せず過ごしてください。

一方で、ミントやグレープフルーツなど、胃腸の働きを助ける効果やリラックス効果のある香りもあります。

好きな香りがあればアロマオイルで芳香浴を楽しんだり、アロマミストをマスクや衣類に使用すると、つわり症状の軽減に役立つかもしれません。

十分な休息をとり、ストレスを溜めない生活を心がける

仕事や家事などは無理をせず、体調優先で生活することを心がけましょう。

横になっているのが楽な人もいれば、何かをしていた方が気が紛れるという人もいます。

パートナーや家族、周囲の人々の理解や協力も必要です。

妊娠初期は職場への報告をためらう方も多いですが、適切な配慮をしてもらうことも大切です。

男女雇用機会均等法により、妊婦さんは事業主に、通勤緩和や勤務時間の短縮などの措置をお願いすることができます

産科医による母性健康管理指導事項連絡カード」の記載もその一つです。仕事による心身の負担の軽減のため、ぜひ相談してみてくださいね。

症状が強い場合は、無理せず病院へ相談を

妊娠初期の妊婦健診は4週間毎のため、つわりが辛くてもなかなか病院に相談できないと感じてしまう人は多いと思います。

しかし、以下のような症状は「妊娠悪阻」の可能性があります。無理せず病院に相談してください。

妊娠悪阻とは?

妊娠悪阻(にんしんおそ)とは、「つわり」でみられる悪心、嘔吐、食欲不振などが高じて食物の摂取が損なわれ、栄養障害をきたし、治療を必要とする状態のことです。

具体的には、頻回の嘔吐、食事摂取困難、尿中ケトン体陽性、脱水・飢餓状態、5%以上の体重減少などです。

治療としては、入院による心身の安静、食事指導、脱水・飢餓に対する輸液療法を行います。

そのほか、吐き気止めやビタミンB6などの薬物療法も選択される場合があります。

妊娠悪阻が進行すると、深刻な栄養・代謝障害をきたし、Wernicke脳症となる場合があります。Wernicke脳症では、意識障害や眼振、失調性歩行などが出現し、最悪の場合、母子の命が失われる可能性があります。「つわりは病気ではない」という人がいますが、妊娠悪阻は命に関わる病気です。

身体的な負担だけではなく、つわり症状が強い妊婦さんの中には、うつ様の症状がみられる方もいます。我慢を続けることは心身両面から考えて、とても危険なことなのです。

  • 固形物だけでなく水分摂取も難しく、嘔吐を繰り返す
  • めまいや立ちくらみの症状が強い
  • 著しい体重減少、体力の低下
  • 口の渇き、皮膚の乾燥

しかし、「つわりは病気じゃない」「寝てばかりいるから悪くなるのよ」「私はもっと動いていた」など、心ない言葉で傷ついた妊婦さんを何人もみたことがあります。

確かに軽度のつわりは、妊娠による身体の変化、マイナートラブルの一つとも考えられるかもしれません。しかし、つわりの重症化(妊娠悪阻)は母子の命に関わることもあるのです。

終わりの見えないつわりとの付き合い方は、本当に難しいですよね。「出産の方が楽だった」という人もいるほどです。

つわりの期間は心身ともに疲弊しているので、周囲、特にパートナーのサポートがとても大切です。辛い時に支えてくれたことはずっと忘れません。

反対に、何もしてくれなかった、心ない対応をされたことはわだかまりとしてずっと残ってしまうのです。

何もできないと歯痒い気持ちになるパートナーもいるかもしれませんが、そんなことはありません。背中をさすってくれたり、食べられそうなものを用意してくれたり、辛い気持ちを受け止めてくれるだけでいいのです。

辛い時期を夫婦二人で乗り越えられるよう、妊娠中の体の変化を共有して支え合っていってくださいね!

 

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